第2部 礼典諸式 第20節 自殺者と奇禍、遭難による事故者の取扱い 自殺者に対して 「自害してはいけない」とある神の御旨に反した行動をとって自ら尊いいのちを絶ったものであるから、葬儀は教会では執行しないで自宅で執り行うことになっている。本人が自殺するようになったのには、深く込み入った事情があってのことだから、牧師は家人に対して理解と同情をもって接すべきである。告別式は教会と同様であるが、すべてにおいて聖霊の導きを仰ぎつつ、遺族や親戚の者をひがませないように愛と常識とをもって執行すべきである。家族の中からこのような者を出した時の家人の心痛は特別なものであるから、真の慰めこそ神から与えられるものであることを充分あかしし、祈りをもって信仰に導くよう努力すべきである。また告別式にはなるべく教会員も出席し、同情と慰めの実を現すことに努むべきである。 奇禍、遭難事故による死者に対して 最近は奇禍、遭難で死亡する者、交通事故や不可抗力の出来事でいのちを失う者が多くなってきた。このような特殊な場合には、遺族らを深い同情と心からの親切とをもって取り扱うべきである。「逆境の日には反省せよ」とみことばにあるように、この出来事に対して、遺族やその他の者はいろいろと反省させられている時であるから、信仰の必要性について良い導きを与えるべきである。ゆえに、告別式の説教、感話、祈祷などについては、聖霊の導きと常識ある考慮とが必要である。 聖書 伝道者の書7章13、14節 神のみわざに目を留めよ。神が曲げたものをだれがまっすぐにできようか。順境の日には喜び、逆境の日には反省せよ。これもあれも神のなさること。それは後の事を人にわからせないためである。 ヨハネの福音書13章7節 イエスは答えて言われた。「わたしがしていることは、今はあなたにはわからないが、あとでわかるようになります。」 祈祷(一例) 全知全能の御神よ、私たちには永遠の計画によるご摂理とご経綸とを計り知ることはできませんが、神に従う者に対して恵み豊かであられることを信じて、御名をあがめます。 今回当家に起ったこの悲しい出来事について、人知で計り知ることはできませんが、ただ神を見上げて一切を御手におゆだねします。「逆境の日には反省せよ」とのみことばに教えられて、いま御前にへりくだり、自ら反省することができるようにしてください。 いま私たちには多くの未知の世界があり、不可解な出来事がありますが、「あとでわかるようになります」とあるとおり、御前には何事も明らかにされることをおぼえて、地上に現れる部分のみに目をつけず、天に目を注ぎ、失意の状態にあっても、信仰を持って進むことを得させてください。かくして今の災いも、や がては転じて福となることを信じ、ただ御名をあがめさせてください。悲しむ者とともに悲しんでいる私たち一同の上に、天来の尽きざる慈愛と慰めを与えて励ましてください。尊い主イエス・キリストの御名によってお祈りいたします。 アーメン。 備考 交通事故、奇禍、遭難事故などは、今後ますます増加の傾向にある。ここではそれぞれ事情を異にするために総括的に取り扱ったが、それぞれの事情や情況については、家人や友人から聞き、良識をもって適宜に取り扱うべきである。信仰による慰安を中心とした説教や感話等の必要なことは言うまでもないが、このような時は家人や関係者の感受性が強くなっている時であるから、態度や用語にも充分な注意を要する。